「葉むら」の暖簾にふれて

第15回

2024.05.01

 ギンポウ。銀宝(ギンポ)と呼ぶのが一般的だそうですが、東京・神奈川ではギンポウと呼ぶらしく、店主の関沢氏もギンポウと呼びます。この銀宝という魚は、天ぷらのためだけに生まれてきた魚だというくらい、天ぷらにすると絶品で、最高の天ぷらダネだということです。天ぷらにすることで本領を発揮する銀宝は、最高の天ぷらダネなのです。

 そもそも「銀宝」の名前の由来はどういったものなのでしょうか。これには諸説あるようですが、次の説明が生物学的でしっくりくるのではないかと個人的にはそう思います。「その産卵生態にある。北方系のギンポ類は例外なく卵膜に粘着性があり、産み出された卵塊を雄あるいは雌親が体で巻きつけて1つの球状の大卵塊に整形し、孵化するまで守り続ける習性がある。発生が進んで発眼したものは全体に銀白色を呈するところから、親魚が身を挺して守り抜く卵塊を『銀の宝物』と見立てたものである。」というものです。ちなみにBing AIに聞いてみると、江戸時代の貨幣である丁銀に形が似ていることからその名がつけられたという説が有力であるという回答でした。

 この銀宝は滑りが強く、おまけに頭部後方から尾ビレまで続く長い背ビレが、硬くて短いとげ状で切れ味が鋭いため下処理が大変で、「銀宝を仕入れていればてんぷら屋として信用できる」と断言するてんぷら通がいると言います。そういう天ぷら通から見れば、葉むらは信用できる天ぷら屋と断言できます。

 この銀宝ですが、漁の期間が初夏の1か月間程しかない上に、漁獲量が激減しているため天ぷらダネとしては高級食材の1つです。その時期に葉むらでギンポウの天ぷらが食べられたなら、それはとっても幸運だということです。

 ぜひこの絶品の銀宝の天ぷらを葉むらで味わってみてください。
(次回につづく‥‥‥)

(文:立)

注釈:文中で取り扱っているデータ等については、Bing AI(Chat-GPT4搭載)との対話及びネット情報、文献等からの筆者独自の分析によるものです。
参考文献:『天ぷらのサイエンス』(誠文堂新光社, 2022)