「葉むら」の暖簾にふれて

 「一流のシェフが作る料理は一度食べて二度味わえる」というふうに私は感じています。どういうことかと言いますと、本当に美味しいものを食した時というのは、食した後、しばらくしてからもう一度その料理のことを思い出します。よくお店を出てから「美味しかったね」などと言ったりしますが、すごく美味しかった料理、例えばコース料理などをいただいた時などは、前菜・主菜・デザートまで、思い出しては感想を述べたりしたりすることがあると思います。

 私の場合、いただいた料理一品一品を思い出しては、あれはどうだった、こうだったなどと自分なりに分析し、あたかももう一度同じ料理を食事しているかのような感覚があります。食べ終えて帰る電車や車の中で、あるいは家についてほっとひと息ついたときや寝る前など… 。例えば、あの前菜は味だけでなく見た目も良かったとか、あのドレッシングはどうやって作っているんだろう、あのメインディッシュとソースとの相性はバッチリだった等々…どこまで行っても主観の枠からは抜け出せないのは理解しているですが、それでも自分なりに一生懸命客観的に分析しようとするのです。

 葉むらの天ぷらを食した時も、まさにそんな感覚に襲われます。エビから始まってかき揚げに至るまで、一品一品が脳裏に蘇ってきます。そして最後のデザートのアイスまでもしっかりと印象づけられていることにも驚かされます。店主特製の手作りアイスの完成度の高さは、それだけでアイスのお店が出せるレベルだと個人的にはそう思えてなりません。ファストフードのような料理では、食べた料理をもう一度じっくりと思い返すようなことはあまりないように思います。もちろん人それぞれ好みがありますから、ファストフード好きの人にとっては思い返すこともあるでしょうが、少なくとも私にはほとんどありません。誤解のないように申し上げておきますが、私は決してファストフードを卑下しているわけではありません。感動するファストフードを口にしたことも当然あります。例えば数年前に韓国・ソウルの確か東大門市場近くにあった店舗だったでしょうか、そこで食べたロッテリアのプロコギバーガーは感動する美味しさでしたから。なんで日本のハンバーガー企業は真似て売り出さないのだろうと今でも思っています。(日本マクドナルドは以前、期間限定販売したことがあるようですが、その後定番商品になっているのかは存じ上げておりません。)

 話が逸れましたが、その道を極めた料理人が振る舞ってくださる料理は、その一品一品を実際に食して感動し、さらに後から思い返してその絶品の旨さをもう一度頭の中で味わう。「葉むらの天ぷら」は、そんな脳内体験をさせてくれる料理だと思っているのは私だけでしょうか…。
(次回につづく‥‥‥)

(文:立)

注釈:文中で取り扱っているデータ等については、Bing AI(Chat-GPT4搭載)との対話及びネット情報、文献等からの筆者独自の分析によるものです。
参考文献:『天ぷらのサイエンス』(誠文堂新光社, 2022)