「葉むら」の暖簾にふれて

第10回

2024.03.03

 なぜ日本人は天ぷらを好むのでしょうか?

 天ぷらが人々に好まれる理由はいくつか考えられますが、まず具材の多さが考えられます。好きな具材を天ぷらダネにすることで食べ物の「好き嫌い度」を軽減できます。また嫌いな食材であってもかき揚げのように他の食材と混ぜ合わせることでバランスよく食材を摂取できます。また食材がどんなものに変わっても、衣をつけて揚げるというシンプルな調理法は変わりません。いろんな魚介や野菜を天ぷらダネに使用することで、色とりどりになり見た目が美しくなります。そして何よりそれらの食材の旨みを引き立てる衣のサクサクとした食感でしょう。

 日本人が天ぷらを食する時、その歴史と文化を思い浮かべながら食べるということは普通はしないと思いますが、外国人が天ぷらを口にするときには同時に歴史と文化を噛みしめているのだろうと思います。そうであるから、天ぷらは国際的にも高く評価されているのではないでしょうか。

 3月と言えば雛祭りですが、雛祭りと蛤との関連性はというと、蛤の特性と旬、そして女の子の幸せを願う意味が込められているということです。蛤は二枚貝の一種で、その二枚の貝殻は一対になっていて、他の蛤の貝殻とは合わない特性があります。この特性から、蛤は「一生一人の人と仲良く添い遂げる」ことを象徴し、良縁を表しています。雛祭りに蛤のお吸い物を食べる習慣は、「娘が、ただ一人の旦那様と連れ添えますように」という願いが込められているとされています。また、蛤は2月から4月にかけて旬を迎え(おそらく旧暦での旬の時期)、その時期はちょうど雛祭りと重なります。そのため、旬の蛤を食べることで、その栄養を丸ごと頂くことができます。蛤の貝殻は胡粉といわれる白色顔料に使われており、同じように使用される加工のしやすいカキやホタテの貝殻よりも白色度が高く、より高級な胡粉の材料になることから、胡粉の白色はおひなさまのお顔の仕上げにも使用されることが多いそうです。そうしたことも含め、蛤は雛祭りと密接にかかわっていることがわかります。

 そのような蛤ですが、天ぷらダネとしても絶品です。「葉むら」では鹿島産の蛤を使用しています。「鹿島灘はまぐり」は、茨城県の大洗から千葉県の犬吠崎にかけて広がる鹿島灘の特産品です。鹿島灘の沿岸部は砂地が続き、10cm(大人の握りこぶし大)を超える大きさのはまぐりが獲れる好漁場となっています。蛤は大きいほど高値で取り引きされ、「鹿島灘はまぐり」は貴重な国産はまぐりの高級品として有名です。その全国屈指の水揚げを誇る蛤の天ぷらをぜひ「葉むら」で味わってみてください。(次回につづく‥‥‥)

(文:立)

注釈:文中で取り扱っているデータ等については、Bing AI(Chat-GPT4搭載)との対話及びネット情報、文献等からの筆者独自の分析によるものです。
参考文献:『天ぷらのサイエンス』(誠文堂新光社, 2022)