第20回
2024.10.03
今夏も酷暑続きでいつまでこの暑さが続くのかと、秋の訪れを心待ちにしていましたが、ここのところ朝晩はすっかり涼しくなって過ごしやすくなりました。街中をジョギングしているとどんぐりや銀杏の実が道端に落ちていたり、色鮮やかに曼珠沙華が咲き乱れているのを見かけます。耳をすませばコオロギの輪唱があちらこちらから聞こえてくるのがわかります。ようやく「秋」を感じられるようになりました。曼珠沙華は気温が20℃〜25℃ぐらいになると咲くそうなので、そのことからも気温が下がって秋へ移りつつあることが実感できます。
葉むらの天ぷらダネも夏から秋へと移り変わってきています。今回はそれらの中から牡蠣(カキ)について少し触れてみたいと思います。
牡蠣は一度岩につくと一生動かないそうです。 そして牡蠣は岩についたその体に大量の海水を取り入れ、その中のプランクトンを食べて生きています。この習性を利用することで牡蠣養殖が可能になったのではないでしょうか。また牡蠣は、川から流れ出るミネラルと豊富なプランクトンを確保できる河口付近、かといって海の浅瀬では牡蠣の生育には適さないのだそうです。天然物にしても養殖物にしても、生育条件が揃わなければ、決して私たちは口にできないという、まさに恵みの食材ということです。そう考えると本当有り難いことです。
日本では牡蠣は、北は北海道から南は九州まで獲れますから、地域によって旬の時期がずれ、通年牡蠣を食することができます。なのでオイスターバーや牡蠣小屋のような牡蠣専門の飲食経営が可能になるわけですが…。そうは言っても食材には、どれもいちばんおいしくて栄養たっぷりな時期、「旬」というものがあります。牡蠣も例外にもれずその旬があります。英語圏では牡蠣が産卵の準備に入り身が水っぽくなり美味しくなくなるという理由から、「Rの付かない月は牡蠣を食べない」(スペルアウトすると一目瞭然ですが、Rが無い月:5月~8月)と言われているぐらいですから。
日本の牡蠣には主に冬場が旬の真牡蠣と夏場が旬の岩牡蠣があります。秋からの牡蠣は、岩牡蠣がシーズンを終え、真牡蠣へ切り替わっていくシーズンです。真牡蠣の旬は12月から2月ごろですが、10月はシーズン最初、出始めなのでやや小ぶりかもしれませんが、徐々に大きく育ってきます。真牡蠣は、生で食べると磯の香りに包まれたプリッとした食感と塩味に加え、とてもクリーミーな旨味が感じられますが、それを加熱をすると身が凝縮され、旨味がギュっと詰まった濃い味わいをもたらしてくれます。
牡蠣は「海のミルク」と呼ばれるほど栄養価が高いことはよく知られています。真牡蠣は見た目も乳白色をしているので牛乳をイメージさせることもそうですが、牛乳のように優れた栄養バランスを誇ることから、海のミルクと呼ばれるようになったそうです。 タンパク質が豊富で、ビタミンB1・B2・ B12、カルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラル類もバランス良く含まれています。また、タウリンなどの機能性成分も豊富に含まれていますから、免疫力アップや健康増進に効果的です。 疲労回復、美肌をはじめ、動脈硬化・肝臓病・心臓病などの 生活習慣病の予防効果も期待できます。
子どもとは異なり、牛乳の栄養分は大人になってからの吸収率は低く、また牛乳の消化もしにくいことが分かっています。大人であるなら、牛のミルクよりも海のミルクから栄養分を吸収する方が体に良さそうです。
牡蠣に含まれている鉄分は、体内への吸収率が15~30%ととても低いので、レモンをかけて食べることでレモンのビタミンCが鉄分の吸収を助けます。また亜鉛の吸収も助けてくれるのでレモンをかけて食べることはとても良いというわけです。また女性にとって牡蠣という食材は、貧血予防やホルモンバランスを整える作用もあり、多くの面で牡蠣の効果を感じられる食材と言えそうです。
葉むらのご主人が絶妙の火の入れ方で揚げた旬の牡蠣の天ぷらを是非味わってみてください。(次回につづく‥‥‥)
(文:立)
注釈:文中で取り扱っているデータ等については、Bing AI(Chat-GPT4搭載)との対話及びネット情報、文献等からの筆者独自の分析によるものです。
参考文献:『天ぷらのサイエンス』(誠文堂新光社, 2022)